令和6(2024)年度報酬改定|訪問介護の改定項目をピックアップ!【1月22日版】

コラム47
令和6(2024)年度報酬改定について、基本報酬や加算・減算の変更、指定基準の変更・追加など、訪問介護に関係する改定項目をわかりやすく説明します。

この記事で解説している訪問介護事業所の改定項目を見やすくまとめた資料を無料でプレゼントします。ぜひご活用ください。

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※ 以下の内容は2023年5月24日から2024年1月22日までの社会保障審議会介護給付費分科会の資料を基に作成しています。実務に際しては必ず厚生労働省および指定権者の最新の情報をご確認ください。

令和6年度報酬改定、訪問介護の改定項目まとめ

令和6(2024)年度の報酬改定に向けた議論が進んでいます。令和6年1月15日、1月22日の社会保障審議会介護給付費分科会では、基準や報酬についての改定案がそれぞれ了承されました。

今後、パブリックコメントに寄せられた意見を踏まえて最終的な内容が確定され、省令や告示として公布されます。

この記事では1月22日までの厚生労働省の資料から訪問介護に直接関係する改定項目を抜粋し、業務領域ごとに分けて、その概要をわかりやすく解説します。

参考:第238回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)資料(1月15日)/第239回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)資料(1月22日)|厚生労働省

基本報酬について

基本報酬の見直し

訪問介護の基本報酬については以下の通り示されています。

身体介護

現行改定後増減
20分未満167単位/回163単位/回-4単位/回
20分以上30分未満250単位/回244単位/回-6単位/回
30分以上1時間未満396単位/回387単位/回-9単位/回
1時間以上1時間30分未満579単位/回567単位/回-12単位/回
以降30分を増すごとに算定84単位/回82単位/回-2単位/回

生活援助

現行改定後増減
20分以上45分未満183単位/回179単位/回-4単位/回
45分以上225単位/回220単位/回-5単位/回
身体介護に引き続き生活援助を行った場合67単位/回65単位/回-2単位/回

通院等乗降介助

現行改定後増減
99単位/回97単位/回-2単位/回

今回の報酬改定で訪問介護の基本報酬は引き下げとなりました。なお基本報酬改定に際しての厚生労働省資料では、処遇改善加算において訪問介護の加算率を14.5~24.5%と高く設定した点が強調されています。

参考:令和6年度介護報酬改定における改定事項について(厚生労働省)P.164

加算について

特定事業所加算の見直し

特定事業所加算について、看取り期の利用者など重度者へのサービス提供や、中山間地域などで継続的なサービス提供を行っている事業所を適切に評価するため、以下のように見直されます。

  • 看取り期の対応を適切に評価するため、重度者対応要件として「看取り期にある者」に関する要件を新たに追加する
  • 中山間地域などでは事業運営が非効率にならざるを得ない場合もあるため、利用者への継続的なサービス提供を新たに評価する
  • 重度要介護者などへの対応における要件について、実態を踏まえ、一部の現行区分について見直しなどを行う

特定事業所加算の単位数(訪問介護)

現行の(Ⅳ)が廃止され、現行の(Ⅴ)が(Ⅳ)になります。それに伴い、新たな(Ⅴ)が創設されます。

現行

現行改定後
特定事業所加算(Ⅰ)所定単位数の20%を加算
特定事業所加算(Ⅱ)所定単位数の10%を加算
特定事業所加算(Ⅲ)所定単位数の10%を加算
特定事業所加算(Ⅳ)所定単位数の 5%を加算
特定事業所加算(Ⅴ)所定単位数の 3%を加算

改定後

現行改定後
特定事業所加算(Ⅰ)所定単位数の20%を加算
特定事業所加算(Ⅱ)所定単位数の10%を加算
特定事業所加算(Ⅲ)所定単位数の10%を加算
【廃止】特定事業所加算(Ⅳ)所定単位数の 5%を加算
【変更】特定事業所加算(Ⅳ)所定単位数の 3%を加算
【新設】特定事業所加算(Ⅴ)所定単位数の 3%を加算

算定要件

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各区分ごとの算定イメージ

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画像:令和6年度介護報酬改定における改定事項について(厚生労働省)P.9,10を参考に編集部作成

認知症専門ケア加算の見直し

令和3年度の報酬改定で導入された認知症専門ケア加算ですが、「日常生活自立度Ⅲ以上の者の割合が50%以上」という算定要件とサービスの利用実態が合わないなどの課題がありました。

そのため今回の改定では「日常生活自立度Ⅱ以上の者の割合が50%以上」とすることも含め、利用者の受け入れに関する要件の見直しが行われます。

実態に即して日常生活自立度Ⅱの利用者を要件とすることで、認知症高齢者の重症化の緩和や、日常生活自立度Ⅱの利用者への適切な専門的ケアを評価する狙いがあります。

またこの改定に合わせて、認知症専門ケア加算(Ⅱ)の要件に「日常生活自立度Ⅲ以上の者が利用者の20%以上」という内容が追加されます。

口腔連携強化加算の創設

口腔連携強化加算の単位数…50単位/回(1か月に1回のみ)

高齢者は必要な歯科治療が行われていないことがあり、特に在宅療養者で、その割合が高くなっています。

一方で訪問系サービスや短期入所系サービスには、口腔に問題がある利用者の把握や歯科医療機関との連携を評価する加算がありません。

そこで訪問介護などの職員が利用者の口腔の状態を確認し、歯科専門職による適切な口腔管理の実施に繋げられるよう、新たに口腔連携強化加算が創設されることになりました。

口腔連携強化加算は、事業所の従業者が利用者の口腔の健康状態を評価し、利用者の同意を得て歯科医療機関と介護支援専門員に情報提供した場合に、1か月に1回のみ算定できます。

なお事業所は、歯科専門職(※)が従業者からの相談などに対応する体制を確保し、その旨を文書などで取り決めている必要があります。

※ 診療報酬の歯科点数表区分番号C000に掲げる歯科訪問診療料の算定の実績がある歯科医療機関の歯科医師または歯科医師の指示を受けた歯科衛生士

「特別地域加算」「中山間地域等の小規模事業所加算」「中山間地域に居住する者へのサービス提供加算」の対象地域を明確化

過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法で「過疎地域」とみなして同法の規定が適用される地域などが、特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算、中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の算定対象地域に含まれることが明確化されます。

特別地域加算の対象地域の見直し

特別地域加算の対象地域のうち、「過疎地域などで、人口密度が希薄、交通が不便などの理由でサービスの確保が著しく困難であると認められる地域」については、都道府県・市町村から対象地域の追加や削除の必要性などをヒアリングした上で見直されます。

処遇改善加算について

処遇改善加算は一本化され「介護職員等処遇改善加算」へ

現行の「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」は、各加算・区分の要件や加算率を組み合わせた上で、4段階の「介護職員等処遇改善加算」に一本化されます。

3つの加算が存在することで煩雑になっていた手続きや要件を整理し、職員確保に向けて、できるだけ多くの事業所が処遇改善加算を活用できるようにする狙いがあります。

なお新加算への移行にあたっては1年間の経過措置期間が設けられています。

介護職員等処遇改善加算の単位数(訪問介護)

現行改定後
介護職員等処遇改善加算Ⅰ24.5%
介護職員等処遇改善加算Ⅱ22.4%
介護職員等処遇改善加算Ⅲ18.2%
介護職員等処遇改善加算Ⅳ14.5%

新加算での職種間の賃金配分

一本化後の新しい処遇改善加算では、職員間の賃金配分について「引き続き介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分すること」としつつも、これまでのような職種によるルールはなくなり、事業所内で柔軟に配分できるようになります。

新加算の配分方法

一本化後の新しい処遇改善加算では、どの区分を取得している事業所であっても、4段階の一番下の区分の加算額の2分の1以上を月額賃金の改善に充てることが要件になります。

イメージ図

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令和6年度介護報酬改定における改定事項について(厚生労働省)P.108を元に当社作成

● これまでベースアップ等支援加算を取得していない事業所について

これまでベースアップ等支援加算を取得していなかった事業所が新加算を取得する場合、収入として新たに増加するベースアップ等支援加算相当額の2/3以上を月額賃金の改善に使う必要があります。今まで取得していた事業者との公平性の観点によるものです。

職場環境等要件の見直し

新加算の職場環境等要件については、生産性向上と経営の協働化に関する項目を中心に、人材確保に向けてより効果的なものにする観点で見直されます。

減算について

同一建物減算の見直し

訪問介護では、同一建物等(※)の居住者に対するサービス提供割合が多くなるにつれて、訪問件数は増加し、移動時間や移動距離は短くなっています。

この実態を受け、報酬の適正化に向けて同一建物減算に新たな区分が設けられます。

なお新加算への移行にあたっては1年間の経過措置期間が設けられています。

※ 訪問介護事業所を併設するサービス付き高齢者向け住宅など

現行

減算の内容算定要件
①10%減算事業所と同一敷地内または隣接する敷地内に所在する建物に居住する者(②に該当する場合を除く)
②15%減算上記の建物のうち、当該建物に居住する利用者の人数が1か月あたり50人以上の場合
③10%減算①以外の範囲に所在する建物に居住する者(当該建物に居住する利用者の人数が1か月あたり20人以上の場合)

改定後

減算の内容算定要件
①10%減算事業所と同一敷地内または隣接する敷地内に所在する建物に居住する者(②および④に該当する場合を除く)/td>
②15%減算上記の建物のうち、当該建物に居住する利用者の人数が1か月あたり50人以上の場合
③10%減算①以外の範囲に所在する建物に居住する者(当該建物に居住する利用者の人数が1か月あたり20人以上の場合)
④12%減算 (新設)正当な理由なく、事業所において、前6か月間に提供した訪問介護サービスの提供総数のうち、事業所と同一敷地内または隣接する敷地内に所在する建物に居住する者(②に該当する場合を除く)に提供されたものの占める割合が90%以上である場合

業務継続計画(BCP)未策定事業所に対する「業務継続計画未実施減算」の導入

業務継続計画未実施減算の単位数(訪問介護)

所定単位数の1%に相当する単位数を減算

感染症と災害のいずれか、または両方の業務継続計画(BCP)が未策定の場合の減算が導入されます。

感染症や災害が発生しても必要な介護サービスを継続的に提供できる体制を構築するため、業務継続に向けた計画(BCP)の策定の徹底を求めることが目的です。

なお訪問系サービス、福祉用具貸与、居宅介護支援については、「感染症の予防及びまん延防止のための指針」の整備が義務付けられて間もないことや「非常災害に関する具体的計画(非常災害対策計画)」の策定が求められていないことから、経過措置として令和7(2025)年3月31日までは減算が適用されません。

高齢者虐待防止の推進(高齢者虐待防止措置未実施減算の導入、推進施策の充実など)

高齢者虐待防止措置未実施減算の単位数

所定単位数の1%に相当する単位数を減算

虐待の発生または再発を防止するための措置(※)が講じられていない場合、基本報酬が減算されます。利用者の人権擁護、虐待防止などをさらに推進することが目的です。

※虐待の発生または再発を防止するための委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めること

また高齢者虐待防止に向け、以下のような施策の充実が図られます。

施設でのストレス対策を含む高齢者虐待防止に向けた取組例を収集し周知する

国の補助により都道府県が実施している事業で、ハラスメントなどのストレス対策に関する研修を実施できることを明確化する

上記事業の相談窓口を、高齢者本人とその家族だけでなく介護職員なども利用できることを明確化する など

この後も引き続き解説していきますが、印刷してお手元で確認なさりたい方は、記事の内容を見やすくまとめた資料を以下のリンクからダウンロードしてご活用ください。

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人員について

テレワークの人員配置基準上の取り扱いを明確化

人員配置基準などで具体的な必要数が定められている職種のテレワークについて、個人情報を適切に管理していること、利用者の処遇に支障が生じないことなどを前提に取り扱いが明確化され、職種や業務ごとに具体的な考え方が示されます。

治療と両立する時短職員を週30時間以上で常勤と扱えるように

「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設けた短時間勤務制度を利用する職員については、週30時間以上の勤務で「常勤」として取り扱えることになりました。常勤換算上も、週30時間以上の勤務で常勤換算1として取り扱えます。

介護現場で治療と仕事を両立できる環境整備を進め、職員の離職防止・定着促進を図るための改定です。

管理者の責務と兼務範囲の明確化

介護サービスの質を担保しながら効率的な事業所運営ができるよう、管理者の責務と兼務できる事業所の範囲が明確化されます。

管理者の責務について

管理者の責務が、利用者へのサービス提供の場面などで生じる事象を適時かつ適切に把握しながら、職員と業務の一元的な管理・指揮命令を行うことである旨が明確化されます。

管理者の兼務範囲について

上記の管理者の責務を果たせる場合は、同一敷地内の他の事業所・施設などでなくても兼務できる旨が明確化されます。

人員配置基準に関するローカルルールについて

自治体ごとに人員配置基準の解釈や対応が異なるため(ローカルルール)、都道府県と市町村には以下が求められることになりました。

  • あくまでも厚生労働省令に従う範囲内で、地域の実情に応じた内容とする必要があること
  • 事業者から説明を求められた場合には、ルールの必要性を説明できるようにすること など

その他

身体的拘束等の原則禁止、実施時の記録の義務

不適切な身体的拘束などを防ぐため、利用者または他の利用者などの生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束などを行ってはならないとされます(身体拘束等の原則禁止)。

また身体的拘束などを行う場合には、以下の記録が義務付けられます。

身体拘束などの態様/時間/その際の利用者の心身の状況/緊急やむを得ない理由

「書面掲示」規制の見直し

現在の運営基準では、事業所の運営規程の概要のような重要事項などは、原則として事業所内での「書面掲示」を求めています。一方で壁に掲示する代わりとして、備え付けの書面(紙ファイルなど)または電磁的記録の供覧(Webサイトへの掲載など)も認められています。

今回の改定では、インターネット上で情報の閲覧が完結するよう、「書面掲示」に加えて、原則として重要事項などの情報をWebサイト(法人のホームページなど、または情報公表システム)に掲載・公表しなければならないとされます。こちらは令和7年度から義務となる予定です。

訪問介護の報酬改定は令和6年4月1日施行へ

令和6(2024)年度介護報酬改定の施行時期については6月施行の案も出ていましたが、通所介護については従来通り4月1日施行となりました。

なお6月1日施行となるサービスは訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所リハビリテーションのみで、その他のサービスは4月1日施行です。

まとめ

報酬改定・制度改正は訪問介護事業所の運営に大きな影響を及ぼします。指定権者からの連絡を待って準備を始めるとあわただしくなるので、今のうちに情報収集を進め、できることから少しずつ準備を始めましょう。

この記事の内容を資料にまとめましたので、お手元で確認したい方はダウンロードしてご活用ください。

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訪問介護のための報酬改定のポイント

また厚生労働省のWebサイトでは、現時点での最新情報や議論の過程が確認できます。記事と一緒にぜひご確認ください。

社会保障審議会(介護給付費分科会)のページ|厚生労働省

令和6年度介護報酬改定に関する審議報告|厚生労働省

第238回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)資料|厚生労働省

第239回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)資料|厚生労働省

監修:大和田陽子
看護師 / ケアマネジャー

介護保険制度開始前から介護業界で管理者や看護師として勤務。医療・福祉系の株式会社では、コンプライアンス部次長として介護および障害福祉事業の実地指導対応を担当。現在は訪問看護ステーションで管理者を務める。

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