令和6(2024)年度報酬改定|通所介護・地域密着型通所介護の改定項目をピックアップ!【1月22日版】
この記事で解説している通所介護事業所の改定項目を見やすくまとめた資料を無料でプレゼントします。ぜひご活用ください。
※ 以下の内容は2023年5月24日から2024年1月22日までの社会保障審議会介護給付費分科会の資料を基に作成しています。実務に際しては必ず厚生労働省および指定権者の最新の情報をご確認ください。
令和6年度報酬改定、通所介護・地域密着型通所介護の改定項目まとめ
令和6(2024)年度の報酬改定に向けた議論が進んでいます。令和6年1月15日、1月22日の社会保障審議会介護給付費分科会では、基準や報酬についての改定案がそれぞれ了承されました。
今後、パブリックコメントに寄せられた意見を踏まえて最終的な内容が確定され、省令や告示として公布されます。
この記事では1月22日までの厚生労働省の資料から通所介護(地域密着型通所介護を含む)に直接関係する改定項目を抜粋し、業務領域ごとに分けて、その概要をわかりやすく解説します。
参考:第238回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)資料(1月15日)/第239回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)資料(1月22日)|厚生労働省
基本報酬・加算・減算について
基本報酬の見直し
通所介護の基本報酬について以下の見直しが示されています。
※以下の単位数はすべて1回あたり(7時間以上8時間未満の場合)
通常規模型
現行 | 改定後 | |
要介護1 | 655単位 | 658単位 |
要介護2 | 773単位 | 777単位 |
要介護3 | 896単位 | 900単位 |
要介護4 | 1,018単位 | 1,023単位 |
要介護5 | 1,142単位 | 1,148単位 |
大規模型Ⅰ
現行 | 改定後 | |
要介護1 | 626単位 | 629単位 |
要介護2 | 740単位 | 744単位 |
要介護3 | 857単位 | 861単位 |
要介護4 | 975単位 | 980単位 |
要介護5 | 1,092単位 | 1097単位 |
大規模型Ⅱ
現行 | 改定後 | |
要介護1 | 604単位 | 607単位 |
要介護2 | 713単位 | 716単位 |
要介護3 | 826単位 | 830単位 |
要介護4 | 941単位 | 946単位 |
要介護5 | 1,054単位 | 1,059単位 |
豪雪地帯での急な悪天候などでサービス提供時間が短くなった場合の、報酬上の取り扱いを明確化
現在は、当日の利用者の心身の状況(急な体調不良など)でサービス提供時間が通所介護計画上の所要時間よりやむを得ず短くなった場合には、計画上の単位数を算定できます。
今回の改定で、この「やむを得ず短くなった場合」に、利用者の心身の状況だけでなく、降雪などの急な天候悪化などで普段より送迎に時間がかかった場合も含まれることになります。
豪雪地帯などでも事業者が継続的にサービス提供ができるようという観点での改定です。
入浴介助加算の見直し
入浴介助加算(Ⅰ)(Ⅱ)について、以下のように見直されます。
入浴介助加算(Ⅰ)について
職員の更なるスキル向上のため、入浴介助加算(Ⅰ)の算定要件に「職員への入浴介助に関する研修などの実施」が追加されます。
入浴介助加算(Ⅱ)について
入浴介助加算(Ⅱ)の算定要件である「医師等(※)による、利用者宅浴室の環境評価・助言」について、今回の見直しにより「医師等の代わりに介護職員が訪問し、医師等の指示の下、ICT機器を活用して状況を把握し、医師等が評価・助言する場合」も算定できるようになります。人材の有効活用が目的です。
※ 医師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、介護支援専門員その他の職種の者
さらに入浴介助加算(Ⅱ)の算定要件について、現在Q&Aや留意事項通知で示されている以下の内容が告示に明記され、要件が明確になります。
- 訪問可能な職種(医師等)として、「利用者の動作および浴室の環境の評価を行うことができる福祉用具専門相談員、機能訓練指導員、地域包括支援センターの職員その他住宅改修に関する専門的知識および経験を有する者」を明記する
- 個別の入浴計画に相当する内容を通所介護計画に記載することで、個別の入浴計画の作成に代えられることを明記する
- 利用者の居宅の状況に近い環境の例として、福祉用具などを設置することで利用者の居宅の浴室の状況を再現しているものを明記する
利用者宅での自立した入浴への取り組みを促進するための改定です。
科学的介護推進体制加算(LIFE加算)の見直し
科学的介護推進体制加算(LIFE加算)について、質の高い情報の収集・分析と入力負担軽減のため、以下のように見直されます。
- LIFE へのデータ提出頻度を、他のLIFE関連加算と合わせ、少なくとも「6か月に1回」から「3か月に1回」に見直す
- 加算の様式について、 入力項目の定義の明確化や他の加算と共通する項目の選択肢の統一化を実施
- 同じ利用者に複数の加算を算定する場合に、一定の条件下でデータ提出のタイミングを統一できるようにする
ADL維持等加算の見直し
アウトカム評価を充実させるため、ADL維持等加算(Ⅱ)のADL利得の要件が「2以上」から「3以上」に見直されます。
またADL利得の計算方法について、初回の要介護認定から12か月以内の人や、他の事業所が提供するリハビリテーションを併用している場合の要件が簡素化されます。自立支援・重度化防止に向けた取り組みをさらに推進するための改定です。
個別機能訓練加算の見直し
個別機能訓練加算(Ⅰ)ロの人員配置要件である「機能訓練指導員を、通所介護などを行う時間帯を通じて1名以上配置しなければならない」が緩和され、配置時間の定めがなくなります。機能訓練を行う人材を有効活用するための改定です。
また単位数については以下の通り見直されます。
個別機能訓練加算の単位数
現行 | 改定後 | |
(Ⅰ)イ | 56単位 | 変更なし |
(Ⅰ)ロ | 85単位/日 | 76単位/日 |
(Ⅱ) | 20単位/月 | 変更なし |
認知症加算の見直し
認知症加算の算定要件として、従業者に対して、認知症ケアの事例検討や技術的指導についての会議などを定期的に開催することが求められます。事業所全体で認知症利用者に対応することが目的です。
また、利用者に占める認知症の方の割合に関する要件は15%以上に緩和されます。
「特別地域加算」「中山間地域等の小規模事業所加算」「中山間地域に居住する者へのサービス提供加算」の対象地域を明確化
過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法で「過疎地域」とみなして同法の規定が適用される地域などが、特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算、中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の算定対象地域に含まれることが明確化されます。
業務継続計画(BCP)未策定事業所に対する「業務継続計画未実施減算」の導入
業務継続計画未実施減算の単位数(通所介護)
所定単位数の1%に相当する単位数を減算
感染症と災害のいずれか、または両方の業務継続計画(BCP)が未策定の場合、基本報酬が減算されます。
感染症や災害が発生しても必要な介護サービスを継続的に提供できる体制を構築するため、業務継続に向けた計画(BCP)の策定の徹底を求めることが目的です。
なお経過措置として令和7(2025)年3月31日までは、「感染症の予防及びまん延防止のための指針」の整備と「非常災害に関する具体的計画(非常災害対策計画)」の策定を行っていれば減算は適用されません。
高齢者虐待防止の推進(高齢者虐待防止措置未実施減算の導入、推進施策の充実など)
高齢者虐待防止措置未実施減算の単位数
所定単位数の1%に相当する単位数を減算
虐待の発生または再発を防止するための措置(※)が講じられていない場合、基本報酬が減算されます。利用者の人権擁護、虐待防止などをさらに推進することが目的です。
※虐待の発生または再発を防止するための委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めること
また高齢者虐待防止に向け、以下のような施策の充実が図られます。
- 施設でのストレス対策を含む高齢者虐待防止に向けた取組例を収集し周知する
- 国の補助により都道府県が実施している事業で、ハラスメントなどのストレス対策に関する研修を実施できることを明確化する
- 上記事業の相談窓口を、高齢者本人とその家族だけでなく介護職員なども利用できることを明確化する など
この後も引き続き解説していきますが、印刷してお手元で確認なさりたい方は、記事の内容を見やすくまとめた資料を以下のリンクからダウンロードしてご活用ください。
処遇改善加算について
処遇改善加算は一本化され「介護職員等処遇改善加算」へ
現行の「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」は、各加算・区分の要件や加算率を組み合わせた上で、4段階の「介護職員等処遇改善加算」に一本化されます。
3つの加算が存在することで煩雑になっていた手続きや要件を整理し、職員確保に向けて、できるだけ多くの事業所が処遇改善加算を活用できるようにする狙いがあります。
なお新加算への移行にあたっては1年間の経過措置期間が設けられています。
介護職員等処遇改善加算の単位数(通所介護)
介護職員等処遇改善加算Ⅰ | 9.2% |
介護職員等処遇改善加算Ⅱ | 9.0% |
介護職員等処遇改善加算Ⅲ | 8.0% |
介護職員等処遇改善加算Ⅳ | 6.4% |
新加算での職種間の賃金配分
一本化後の新しい処遇改善加算では、職員間の賃金配分について「引き続き介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分すること」としつつも、これまでのような職種によるルールはなくなり、事業所内で柔軟に配分できるようになります。
新加算の配分方法
一本化後の新しい処遇改善加算では、どの区分を取得している事業所であっても、4段階の一番下の区分の加算額の2分の1以上を月額賃金の改善に充てることが要件になります。
介護職員等処遇改善加算のイメージ図
令和6年度介護報酬改定における改定事項について(厚生労働省)P.108を元に当社作成
● これまでベースアップ等支援加算を取得していない事業所について
これまでベースアップ等支援加算を取得していなかった事業所が新加算を取得する場合、収入として新たに増加するベースアップ等支援加算相当額の2/3以上を月額賃金の改善に使う必要があります。今まで取得していた事業者との公平性の観点によるものです。
職場環境等要件の見直し
新加算の職場環境等要件については、生産性向上と経営の協働化に関する項目を中心に、人材確保に向けてより効果的なものにする観点で見直されます。
サービスについて
身体的拘束等の原則禁止、実施時の記録の義務
不適切な身体的拘束などを防ぐため、利用者または他の利用者などの生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束などを行ってはならないとされます(身体拘束等の原則禁止)。
また身体的拘束などを行う場合には、以下の記録が義務付けられます。
身体拘束などの態様/時間/その際の利用者の心身の状況/緊急やむを得ない理由
リハビリテーション・個別機能訓練、口腔管理、栄養管理に係る一体的計画書の様式を見直し
リハビリテーション・個別機能訓練、口腔管理、栄養管理に係る一体的計画書の様式について、記載項目が整理されるとともに、他の様式でのLIFE提出項目を踏まえた様式に見直されます。
令和3年度報酬改定で導入された一体的計画書ですが、利用率は低調です。今回の見直しには、より使いやすい様式にすることでリハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的な取り組みを推進する狙いがあります。
送迎に関する取り扱いの明確化
通所系サービスでの送迎について、利便性の向上や運転専任職の人材不足などに対応するため、以下のように取り扱いが明確化されます。
送迎の範囲に「利用者の居住実態のある場所」を含める
- 利用者の送迎について、利用者の自宅と事業所間の送迎を原則とするが、運営上支障が無く、利用者の居住実態(例えば、近隣の親戚の家)がある場所に限り、当該場所への送迎を可能とする。
他の介護事業所の利用者との同乗を認める
- 介護サービス事業所において、他事業所の従業員が自事業所と雇用契約を結び、自事業所の従業員として送迎を行う場合や、委託契約において送迎業務を委託している場合(共同での委託を含む)には、責任の所在等を明確にした上で、他事業所の利用者との同乗を可能とする。
障害福祉サービスの利用者との同乗を認める
- 障害福祉サービス事業所が介護サービス事業所と雇用契約や委託契約(共同での委託を含む)を結んだ場合においても、責任の所在等を明確にした上で、障害福祉サービス事業所の利用者も同乗することを可能とする。
※なお、この場合の障害福祉サービス事業所とは、同一敷地内事業所や併設・隣接事業所など、利用者の利便性を損なわない範囲内の事業所とする。
引用元:令和6年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省
この後も引き続き解説していきますが、印刷してお手元で確認なさりたい方は、記事の内容を見やすくまとめた資料を以下のリンクからダウンロードしてご活用ください。
人員について
テレワークの人員配置基準上の取り扱いを明確化
人員配置基準などで具体的な必要数が定められている職種のテレワークについて、個人情報を適切に管理していること、利用者の処遇に支障が生じないことなどを前提に取り扱いが明確化され、職種や業務ごとに具体的な考え方が示されます。
治療と両立する時短職員を週30時間以上で常勤と扱えるように
「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設けた短時間勤務制度を利用する職員については、週30時間以上の勤務で「常勤」として取り扱えることになりました。常勤換算上も、週30時間以上の勤務で常勤換算1として取り扱えます。
介護現場で治療と仕事を両立できる環境整備を進め、職員の離職防止・定着促進を図るための改定です。
外国人介護人材について、人員配置基準上の取り扱いを見直し
就労開始から6か月未満のEPA介護福祉士候補者と技能実習生(以下、外国人介護職員)について、現在は日本語能力試験N1またはN2に合格した人を除き、人員配置基準への算入が認められていません。これは両制度の目的を考慮したものです。
しかし就労開始から6か月未満でもケアの習熟度が一定に達している外国人介護職員もいるため、人員配置基準上の取り扱いが見直されることになりました。
具体的には、事業者が外国人介護職員の日本語能力や指導の実施状況、管理者や指導職員などの意見などを踏まえて、その外国人介護職員を人員配置基準に算入すると決定した場合には、就労開始直後から人員配置基準に算入できるようになります。
なおその際、適切な指導・支援を行う観点、安全体制の整備の観点から以下の要件が設けられます。
- 一定の経験のある職員とチームでケアを行う体制とすること
- 安全対策担当者の配置、指針の整備や研修の実施など、組織的に安全対策を実施する体制を整備していること
併せて両制度の趣旨を踏まえ、人員配置基準への算入有無にかかわらず、研修または実習のための指導職員の配置、計画に基づく技能修得や学習への配慮といった、法令などに基づく受入れ施設での適切な指導および支援体制の確保が必要であることが改めて周知されます。
管理者の責務と兼務範囲の明確化
介護サービスの質を担保しながら効率的な事業所運営ができるよう、管理者の責務と兼務できる事業所の範囲が明確化されます。
管理者の責務について
管理者の責務が、利用者へのサービス提供の場面などで生じる事象を適時かつ適切に把握しながら、職員と業務の一元的な管理・指揮命令を行うことである旨が明確化されます。
管理者の兼務範囲について
上記の管理者の責務を果たせる場合は、同一敷地内の他の事業所・施設などでなくても兼務できる旨が明確化されます。
人員配置基準に関するローカルルールについて
自治体ごとに人員配置基準の解釈や対応が異なるため(ローカルルール)、都道府県と市町村には以下が求められることになりました。
- あくまでも厚生労働省令に従う範囲内で、地域の実情に応じた内容とする必要があること
- 事業者から説明を求められた場合には、ルールの必要性を説明できるようにすること など
その他
「書面掲示」規制の見直し
現在の運営基準では、事業所の運営規程の概要のような重要事項などは、原則として事業所内での「書面掲示」を求めています。一方で壁に掲示する代わりとして、備え付けの書面(紙ファイルなど)または電磁的記録の供覧(Webサイトへの掲載など)も認められています。
今回の改定では、インターネット上で情報の閲覧が完結するよう、「書面掲示」に加えて、原則として重要事項などの情報をWebサイト(法人のホームページなど、または情報公表システム)に掲載・公表しなければならないとされます。こちらは令和7年度から義務となる予定です。
通所介護の報酬改定は令和6年4月1日施行へ
令和6(2024)年度介護報酬改定の施行時期については6月施行の案も出ていましたが、通所介護については従来通り4月1日施行となりました。
なお6月1日施行となるサービスは訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所リハビリテーションのみで、その他のサービスは4月1日施行です。
まとめ
報酬改定・制度改正は通所介護事業所の運営に大きな影響を及ぼします。指定権者からの連絡を待って準備を始めるとあわただしくなるので、今のうちに情報収集を進め、できることから少しずつ準備を始めましょう。
この記事の内容を資料にまとめましたので、お手元で確認したい方はダウンロードしてご活用ください。また厚生労働省のWebサイトでは、現時点での最新情報や議論の過程が確認できます。記事と一緒にぜひご確認ください。
社会保障審議会(介護給付費分科会)のページ|厚生労働省
令和6年度介護報酬改定に関する審議報告|厚生労働省
第238回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)資料|厚生労働省
第239回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)資料|厚生労働省
監修:大和田陽子
看護師 / ケアマネジャー
介護保険制度開始前から介護業界で管理者や看護師として勤務。医療・福祉系の株式会社では、コンプライアンス部次長として介護および障害福祉事業の実地指導対応を担当。現在は訪問看護ステーションで管理者を務める。
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