令和6(2024)年度報酬改定|処遇改善加算は一本化される?主なトピックを解説(介護)
処遇改善加算に関する論点
令和6(2024)年度の報酬改定に向けて、処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算に関する議論がスタートしています。
令和5(2023)年11月6日に開催された第230回社会保障審議会介護給付費分科会では、これら処遇改善関連の加算をより活用しやすく、より実効性を持ったものにするため以下2つの論点が示されました。
- 処遇改善加算の一本化
- 職場環境等要件等の見直し
この記事では11月6日の分科会の資料をもとに、議論の概要と背景を解説します。
処遇改善加算の一本化
処遇改善に関する加算は現在「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3つに分かれていますが、事務負担の軽減などを目指し、これら3加算の一本化に向けた議論がされていく予定です。
▶令和4年度10月開始!『 介護職員等ベースアップ等支援加算 』とは
一本化へ向けた対応案(概要)
一本化へ向けた対応として、具体的には以下のような案が挙げられています。
- 3加算の職種間の配分ルールを「介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することとするが、事業所内で柔軟な配分を認める」に統一する
- ベースアップ等要件は、ベースアップ等に充てる割合を見直しつつ一本化後の新加算全体に適用する
- 職場環境等要件を見直す
また事業所側が準備できるよう一定の移行期間を設けること、一本化後の新加算をわかりやすい名称にすることなども併せて議論されます。
一本化の背景
処遇改善関連の加算は介護職員の深刻な人手不足の解消や賃金向上、職場環境の改善などを目的としており、国としても積極的な活用を推進したいところです。
しかしながら事務の煩雑さ、制度の複雑さ、職種間の賃金バランス、利用者の自己負担増などを理由に算定していない事業所も一定数あり、特に特定処遇改善加算の取得率は令和5年4月時点で77.0%にとどまっている状況です。
そのため事業所の事務負担を軽減すること、柔軟な運用を可能にすること、また加算の算定により、利用料金の自己負担分が増える利用者の方々にとっても理解が得やすい制度とすることを目指し、一本化へ向けた検討が進められます。
より詳しく:事務の煩雑さ・制度の複雑さについて
処遇改善関連の加算を算定するには、処遇改善計画書と実績報告書の届け出が必要です。
これまでも手続きの簡素化は図られたものの、3つの加算でそれぞれ異なる要件と賃金分配ルールを理解した上で計画書を作成し、実際に運用し、とりまとめて報告書を出すという一連の流れは事務的な負担が大きく、算定をあきらめる事業所もあります。
こういった事情から、事務負担を軽減するため一本化など思い切った効率化を図ってほしい、わかりやすい算定方法に見直してほしいといった意見が出されていました。
より詳しく:職種間の賃金バランスについて
3つの加算のうち処遇改善加算は介護職員のみが対象です。また特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算についても介護職員が優先されることから、事業所内での賃金バランスを懸念し算定しない事業所もあります。
そのため介護職員への配分を基本とする方針は保ちつつも、3加算とも、事業所の状況に合わせた柔軟な運用がしやすくなるような方向で検討される予定です。
より詳しく:利用者負担増について
事業所が介護報酬である処遇改善加算などを算定すると、利用者の自己負担分も増額となります。利用者の方々にもわかりやすく、利用者負担について納得を得られるような制度にするという観点でも議論が進められます。
参考:「介護人材の処遇改善等(改定の方向性)P.9」|厚生労働省
職場環境等要件等の見直し
処遇改善加算の算定要件に「職場環境等要件」という項目があります。令和6年度の改定では、介護現場の人材不足解消に向けて、新規人材の確保、適切な業務分担の推進、やりがいの醸成・キャリアアップを含めた離職防止や職場環境等要件に基づく取り組みについて議論される予定です。
見直しに向けた対応案(概要)
職場環境改善の取り組みをより実効性が高いものにするため、以下の観点からの見直しが提案されています。
- 多くの事業所が要件を超えた項目数の職場環境改善の取り組みを行っている現状を踏まえ、取り組むべき項目を増やす
- 現行の特定処遇改善加算の「見える化要件」について、職場環境等要件の各項目ごとの具体的な取り組み内容の公表を求める旨を明確化する
- 年次有給休暇取得推進の取り組み内容を具体化する(上司などからの声掛け、業務の属人化の解消など)
- 研修受講支援の対象に、介護福祉士ファーストステップ研修・ユニットリーダー研修を追加する
また職場環境等要件のうち「生産性向上及び経営の協働化」に関する項目についても、拡充を検討してはどうかという案も示されています。
見直しの背景
処遇改善に関する加算の算定要件の一つに「職場環境等要件」があり、職員のキャリアアップや職場の生産性向上に対する取り組みなど6区分24項目が設定されています。
処遇改善加算加算を算定する場合は24項目の中から1つ以上、特定処遇改善加算の場合は6区分ごとにそれぞれ1つ以上に取り組む必要がありますが、これらを算定している事業所の多くが、すでに要件以上の取り組みを実施していることがわかりました。そこで今回の報酬改定では、取り組むべき項目を増やすことが検討される予定です。
またこれまでの調査結果に基づき、有給休暇取得推進の具体的な方策や研修受講支援対象の拡充、さらに具体的な取り組み内容の公表なども検討されていく予定です。調査内容などは以下の資料をご確認ください。
参考:「介護人材の処遇改善等(改定の方向性)P.16」|厚生労働省
処遇改善加算の重要性と変遷
少子高齢化が進む中、介護職は2025年に約32万人、2040年には約69万人が不足すると言われており、介護サービスを安定的に提供していくために人材不足の解消は重要課題となっています。
介護人材の不足解消には、職員の離職防止・新規人材の確保のための賃金向上や職場環境の改善などを進めなければいけません。そのため平成21度の介護報酬改定以降、介護人材の処遇改善について多くの取り組みが実施されました。
処遇改善加算に関する大きな流れ
- 平成21(2009)年4月、処遇改善交付金としてスタート
- 平成24(2012)年4月、処遇改善加算として介護報酬に組み込み
- 令和元(2019)年10月、特定処遇改善加算が創設され2段階に
- 令和4(2022)年10月、ベースアップ等支援加算が創設され3段階に
画像引用:「介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)」P.16|厚生労働省
このような処遇改加算などの取り組みによって、介護職員の賃金は改善してきています。しかし全産業平均賃金と比較すると依然として7万円ほどの差があり、さらに近年は物価上昇の影響も大きくなっています。また離職防止には賃金だけでなく、労働条件などの環境改善も必要であることを示す調査結果もあります。
介護人材の確保へ向けて、賃金向上と職場環境改善をセットで進めていくことが求められています。
画像引用:「介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)」P.11|厚生労働省
参考:「介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)」|厚生労働省
まとめ
介護職員がより働きやすい環境にするために、介護人材の処遇改善などについての議論が進められます。介護業界に長く身を置いた筆者としては、引き続き処遇改善が進み、介護職があこがれの仕事になってほしいと願うばかりです。
高齢化社会の担い手となる介護職について国民の関心も集まっています。今後の議論の行方を見守りましょう。
会議の資料は厚生労働省のWebサイトに掲載されますので、ぜひご確認ください。
参考:社会保障審議会(介護給付費分科会)のページ|厚生労働省
執筆:大和田陽子
看護師 / ケアマネジャー
介護保険制度開始前から介護業界で管理者や看護師として勤務。医療・福祉系の株式会社では、コンプライアンス部次長として介護および障害福祉事業の実地指導対応を担当。現在は訪問看護ステーションで管理者を務める。
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