介護事業所の防災(BCP) ~もしもの備えはできていますか~
災害大国と言われている日本。
いつどこで地震や津波、台風や豪雨など様々な自然災害が発生してもおかしくありません。
介護事業所では多くの高齢者がサービスを利用しており、万が一災害が発生したときには避難などの援助が必要になります。
介護事業者は責任をもって利用者さんたちの安全を守る必要があり、もしもの時の備えを万全にしておくことが重要です。
介護事業所の防災対策
それでは介護事業所では具体的に、どのような防災対策を行う必要があるのでしょうか。
介護事業所の防災には大きく分けて2つの対策があります。
1つ目は平常時の対策、そして2つ目は緊急時の対策です。
■平常時の対策
- 役割を決める
- 実際に災害が起きたときに混乱しないように、あらかじめスタッフそれぞれの役割を決め分担表などを作成しておく
- 連絡体制を整える
- 責任者の連絡先を把握しておくことや、連絡手段の検討を行う。また、責任者不在の時のため代わりの責任者を立てる想定も必要となる
- 職員の召集条件を決める
- 災害の規模や時間帯などによって召集する職員数を決める。自宅からどのくらいの時間で施設に着くかも重要なポイント
- 立地条件を確認する
- 施設の立地条件を確認しておくことで、避難時のリスクなども把握できる。避難経路を決めておき、その道順で気を付けるべき場所なども共有しておく
- 事業所内の防災設備を整備・点検する
- 消防法に則った設備を設置し、有資格者による定期点検をしっかり行う。
- 備蓄
- 非常時に備えて非常食や飲料水などを備蓄し、定期的に点検する。高齢者向けの食糧を備蓄する場合、飲み込みやすいものを用意しておくなどいくつか種類をそろえる必要あり。
- 防災訓練を行う
- 日頃から災害を想定して、防災訓練を行う。定期的に見直しも行う。
などがあります。平常時の対策で重要なポイントは、一度決めたり準備をしたら終わりではなく、必ず定期的に点検し見直しを行うことです。
■緊急時の対策
- 情報収集
- 実際に災害が起きてしまったら、テレビやラジオやインターネットなど様々な手段で正しい情報を集める
- 避難
- 災害によっては建物にいた方がいい場合もありますし、外に出た方がいい場合もあります。適切に判断して慌てずに避難・誘導します。
- 被害状況、安否状況の確認、情報提供
- 被害状況や利用者、スタッフにけが人がいないかの把握などを速やかに行い、救急隊や消防隊への情報提供を行う
- メンタルケア
- 利用者やスタッフのメンタルケアを行う
- 火災時
- 火災を発見したら周囲に知らせ、通報する。小さな火災の場合は消火器を使用し、大きな火災の場合は避難するなど
- 地震時
- 落下物から身を守るための行動を取る。入所者の安否確認を行い必要であれば安全な場所への避難を誘導するなど
- 洪水・高潮時
- 気象庁の情報をもとに避難。低い土地や海沿いなどの場合、早めに判断して避難を行う。
緊急時の対策では、速やかな対応が求められますが、避難したあとの利用者や職員のケアも重要になってきます。
介護事業者に義務付けられたBCPとは
このように介護事業所で行うべき防災対策はいくつも存在します。
その防災対策を含んだ業務継続計画のことをBCP(Business Continuity Plan)と言います。 令和3年度の法改正で、介護事業所はBCPの策定が義務付けられました。
平常時の対応と緊急時の対応をきちんと作成することで安定した事業を継続していくねらいです。 BCPの策定には経過措置期間として3年設けられており、その間に厚労省が発する研修を受けるなど準備をすることができます。
そして2024年には完全義務化となります。
各自治体によって、ガイドラインや計画書作成のひな型が配布されていますのでぜひご確認ください。
高齢者が避難するときに重要なこと
高齢者は自分の力で避難することが難しい方も多く、判断が遅れてしまう可能性も高いです。混乱しないようスムーズに誘導することが重要です。
また、電子機器を持っていなかったり情報収集が難しい場合もあるため正しい情報を正しく共有することも大事です。
それには、介護事業者だけでなく地域の住民や自治会などの協力も必要不可欠となります。地域の住民に応援をお願いしたり、また逆も然り。介護事業におけるBCPにも地域との連携が重要視されています。
完全義務化される2024年までに、事業所内での計画や地域との相互連携はぜひ進めておきましょう。
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